キャンパスでできる“留学”体験
前項目では留学について見てきましたが、留学に興味があっても、留学先での授業についていけるか、費用を工面できるかなど、不安に思う人も多いはずです。
実は留学に行くよりも身近な大学のキャンパスでも、できることがたくさんあります。語学力向上を目指すプログラムなど様々なプログラムが用意されていますし、各国からの留学生と一緒に学ぶ大学もあります。大学のキャンパスは、国内で留学に近い経験ができる絶好の場所になり得るのです。
留学に興味のある人は、まずは大学のプログラムを活用してみるとよいでしょう。そうすることで、留学のイメージが具体的になり、自分が本当に留学したいかどうか、また、留学をする場合も留学の目的が明確になるでしょう。
ここでは、大学にはどのようなプログラムがあり、何ができるのかを一部ご紹介します。ぜひ留学制度に加えて志望校選びの参考にしてください。

語学力を鍛える
大学では、語学力を伸ばすためのプログラムが提供されています。内容は様々ですが、例えば、外国語でのコミュニケーションを重視した少人数制の授業、TOEICやTOEFLの資格試験で得点アップを目指す講座、夏休みなどの長期休暇を利用した集中講座などが挙げられます。
また、外国語で会話をするためのスペースなど、授業以外でも外国語を使える環境が整っている大学もあります。
大学 | プログラム名 | 内容 |
---|---|---|
千葉大学 | English House | 外国人講師による個人レッスンや資格試験対策講座などの他、さまざまな国から来たSA(スチューデントアシスタント)や留学生と気軽に会話ができるラウンジなどを持つ英語のコミュニケーションスペース。 |
中央大学 | 資格試験・スキルアップ | TOEFL/IELTS、TOEIC講座の他、接客英会話やビジネスイングリッシュなどの実践トレーニング講座を実施。 |
早稲田大学 | Tutorial English | スピーキングを中心とした英語運用能力の向上を目指す、4人1組の少人数制授業。 |
大学HP(2024年2月現在)より
- ステップアップ
- 外国語(主に英語)による専門科目の授業を設置している大学もあります。外国語で授業内容を理解する必要があるため、留学準備として利用する学生もいます。また、留学生と一緒に受講する場合もあり、ディスカッション等を通して彼らの文化や価値観を知るきっかけになります。
大学 | プログラム名 | 内容 |
---|---|---|
北海道大学 | 国際交流科目 | 留学生と一緒に授業を受ける科目。授業は原則英語で行われ、履修できる講義は学際的・先端的なテーマを入門レベルから専門レベルまでと幅広い。 |
京都大学 | 英語で学ぶ教養・共通科目 | 全学共通科目の一部を英語で学ぶことができる。授業は主に外国人講師によって実施される。 |
大学HP(2024年2月現在)より
国際感覚を育てる
大学では、国際理解に関する授業を受講したり、留学生と積極的に交流することで、多様な文化や価値観に触れる機会を持つことができます。自国以外の文化や価値観を知ることで、より広い観点から物事を捉えることができるようになり、国際感覚が養われるでしょう。
また、大学によっては語学力・多文化理解・課題解決能力などを一貫して鍛えるプログラムを提供しているところもあります。
大学 | プログラム名 | 内容 |
---|---|---|
東北大学 | TGLプログラム(Tohoku University Global Leader Program) | 語学・コミュニケーション力、国際教養力、行動力、海外研鑽を目的としたプログラム。指定の授業や課外活動に参加し、一定の条件を満たすと、認定証が授与される。 |
大阪大学 | 留学生チューター | 留学生の学習・日本語指導や生活指導を行う。留学生とマンツーマンで交流することができる。 |
立命館アジア太平洋大学 | APハウス(学生寮) | 世界各国・地域の学生が集う学生寮。寮生は日常生活の中で国際感覚を養うことができる。 |
大学HP(2024年2月現在)より
キャリアに役立つ!実践の場
学生が企業等において一定期間就業体験を行うインターンシップは多くの大学で行われています。大学によっては、海外でのインターンシップや、国内の語学力等が必要な場所でのインターンシップを案内しています。将来、語学力や国際感覚を活かして働きたい人にとって、キャリアを考える貴重な機会となるでしょう。
大学 | プログラム名 | 内容 |
---|---|---|
千葉大学 | 国際体験 | 国内外の企業、公官庁での就業体験を行うグローバルインターンシップと国内外のNPO法人、施設、国際機関、フィールドなどで行うグローバルボランティアの二つの科目群がある。 |
上智大学 | インターンシップ科目(全学共通科目) | 国内・海外のグローバル企業、報道機関、国際機関の日本代表部などで行う。期間は短期で2~6週間、長期で3~5ヶ月間。 |
大学HP(2024年2月現在)より
国際教養系大学・学部で学ぶ
ここまで、各大学の個別プログラム等をみてきましたが、留学を意識した大学選びをする場合、国際教養系大学・学部への進学も選択肢の1つとなるでしょう。
このページでご案内する国際教養系大学・学部は、主に世界が直面する課題に対し多角的な見識を持って対応することが出来る人材育成を目指し、幅広い教養と外国語運用力、論理的思考力を育むリベラル・アーツ教育を提供する大学・学部を指します。

授業で用いる言語は、全て英語、日本語と英語の両方を用いるなど大学・学部によって様々です。海外からの留学生も多く学んでいるのが特徴であり、日本に居ながら海外大に留学している学習環境に身を置けるのも魅力です。
国際教養系大学・学部の中には、1年間の海外留学をカリキュラムの一貫として義務付けている大学もあります。
入試については、高校の成績、英語力(TOEFL® Test/ IELTSなどの利用も可)、志望理由書、推薦状など海外大進学と同様に書類審査で行う大学もあるため、海外大進学と併願する高校生もいます。
大学 | 学部 | 内容 |
---|---|---|
国際教養大学 | 国際教養学部 | 国際教養教育を教学理念に掲げ、グローバル社会におけるリーダーの育成を使命としている。すべて英語の少人数授業、外国人教員の割合約6割、1年間の留学義務(200以上の提携大学)、4人に1人が留学生である多文化共生のキャンパスライフ、高い就職率、365日24時間オープンの図書館などが特長。 |
千葉大学 | 国際教養学部 | 「国際」+「日本」+「科学」を混合した文理融合教育により、グローバルイシューを日本独自の視点から解決する能力の育成を目指す。学生が個々で設定した課題に応じて科目を選択する、テーラーメイド教育を実施。授業は主に日本語で行われているが、卒業までに1回以上の海外留学を必須としている。 |
横浜市立大学 | 国際教養学部 | 確かな専門性に裏打ちされた論理的思考力を身に付ける「教養学系」と世界と日本の都市や地域の課題に実践的に取り組む「都市学系」という2つの学系での学びを通して、グローバル人材の育成を目指す。4つのクラスター(科目群)を設け、専門性を確立。海外大学や国際機関、自治体、企業などと連携し、国内外でのフィールド研究を行う学外実習が用意されている。 |
国際基督教大学 | 教養学部 | 1学部1学科制のリベラルアーツカレッジ。1・2年次は31のメジャーから幅広く学び、3年次に「本当に学びたい」分野を選択し専門を深めていく。授業は英語と日本語の両方で行われ、専任教員の3人に1人は外国籍(その国籍も多様)。学生の出身国や地域は50以上におよび、10人に1人が外国籍となっている。約62万㎡の広大で自然豊かなキャンパスも特長。 |
上智大学 | 国際教養学部(FLA) | 日本における国際教育のパイオニア的なプログラムで、授業・指導は100%英語で行われている。2年次後半から3つの専門分野(国際ビジネス・経済学/社会科学/比較文化)からプログラムを選択。教員の50%は海外出身者で、50カ国以上からなる多くの留学生も学んでいる。日本国内にいながら海外キャンパスで学べる環境。 |
法政大学 | グローバル教養学部(GIS) | 人文・社会科学・ビジネスを中心とした、学際・領域横断的な知識を深めるためのリベラルアーツ教育を英語で実施。原則、講義だけでなくディスカッションやプレゼン、レポートや論文の執筆も英語で行っている。1クラスの平均人数は20人程度で、教員と学生の出身地や長期滞在先は世界50以上の国と地域に及ぶ。 |
早稲田大学 | 国際教養学部(SILS) | 「世界へ羽ばたく地球市民を育てる」をコンセプトに、教養を重視し、さまざまな分野の科目を履修するリベラルアーツ教育を実践。世界の最新情勢を包括する7つのクラスター(科目群)を開講している。ほぼすべての授業が英語で行われており、在学中1年間の海外留学が必修。 |
立命館アジア太平洋大学 | サステイナビリティ観光学部(ST) アジア太平洋学部(APS) 国際経営学部(APM) |
全学生に占める国際学生の割合が約50%。その出身国は106ヵ国・地域以上、また教員の2人に1人が外国籍で、キャンパスの公用語は英語と日本語になっている。APハウスと呼ばれる国際教育寮には世界中から集まった学生(国外:国内=7:3)が暮らしており、多文化環境の学びが24時間続く。授業は英語と日本語で行われている。 |
2024年2月現在、河合塾調べ
最後に
このように、日本にいても様々な体験・学びが可能です。入学後にどのようなプログラムがあるか調べることもできますが、前もって知っておくと、意識も高まりますね。
また、ここまで「キャンパスでできる“留学”体験」についてご紹介しましたが、「海外留学は必要ないのか?」というと、そうではありません。文化も社会の仕組みも異なる海外に滞在して初めて得られるものは必ずあります。留学経験のあるKei-Net特派員(大学生会員)に「留学するメリット」を調査したところ、「語学力の向上」だけでなく、「視野が広がる」、「行動力がつく」が上位にランクインしています。
日本の大学に進学する場合、最終的に留学に行く人も行かない人も、大学のプログラムを上手く活用することで、より有意義な大学生活を送ることができるでしょう。自分の目的にあったプログラムが志望大学にあるか、ぜひ調べてみてください。
※各大学のプログラム等は変更となる可能性があります。詳細は大学HP等でご確認ください。
※TOEFL®は、Educational Testing Service(ETS)の登録商標です。
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