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2024年度入試を振り返る国公立大の入試結果分析


今春は前年並みの入試

国公立大の志願動向をみると、国公立大入試の中心である前期日程の志願者数は前年比100%、後期日程で同100%、中期日程でも同98%といずれも概ね前年並みでした<図表3>。今春入試だけをみると競争緩和の実感は薄いかもしれませんが、少し長い期間でみると変化を感じることができます。<図表4>は、過去5年間の倍率の推移を地区別にみたものです。首都圏と近畿をのぞくすべての地区で2020年当時よりも倍率がダウンしており、地方を中心に着実に競争緩和が進んでいることがわかります。また、今春は前期日程の募集区分のうち47%が実質倍率2倍未満となっています。

<図表3>国公立大入試 一般選抜の入試結果
日程 志願者数 合格者数 倍率(志/合)
2024 前年比 2024 前年比 2023 2024
前期 232,341 100% 91,593 100% 2.5 2.5
後期 159,846 100% 20,516 99% 7.7 7.8
中期 31,068 98% 5,180 101% 6.2 6.0
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<図表4>国公立大入試 地区別の倍率の推移
地区 倍率
2020 2021 2022 2023 2024
北海道 2.4 2.3 2.3 2.3 2.1
東北 2.6 2.5 2.5 2.4 2.3
北関東・甲信越 2.6 2.3 2.3 2.3 2.4
首都圏 3.2 3.1 3.1 3.2 3.2
北陸・東海 2.6 2.6 2.5 2.5 2.4
近畿 2.6 2.6 2.7 2.7 2.7
中国・四国 2.6 2.5 2.4 2.2 2.2
九州 2.5 2.4 2.4 2.3 2.3
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中・後期日程を中心に隔年現象に注意

志願者数の増減が大きい大学・学部をみると、ともに中期・後期日程の学部が目立ちます。注意したいのは、昨年志願者が減少し、今年は増加するパターン、または昨年志願者が増加し、今年は減少するパターン、いわゆる隔年現象を起こしているケースです。中期・後期日程は、第1志望ではないことが多く、前年の低倍率大など、一見条件が良く見える大学を探して出願する受験生が増えているようで、志願者の変動幅が大きいのも近年の特徴です。昨年志願者が減少し、今年大きく増加した大学を見ると、鳥取大(工-後)《前年比:90%→172%》、福井大(工-後)《同:57%→200%》などが挙げられます。こうした大学は翌年、志願者が減少する可能性があります。一方、昨年志願者が増加し、今年大きく減少した大学を見ると、岡山県立大(情報工-中)《前年比:108%→65%》、宮崎大(医-後)《同:242%→45%》、室蘭工業大(理工(昼間)-後)《同:188%→68%》などが挙げられます。これらは逆に翌年、志願者が増加する可能性があるので注意が必要です。《志願者前年比はいずれも23→24年度》

学部系統別の状況-女子の志向の変化が人気に影響

<図表5>は学部系統別の志願状況をみたものです。棒グラフの濃い色は学部系統を、その右側の薄い色は各系統内の特徴ある分野を抜粋しています。グラフ内の横線は、前期日程全体の前年比100%のラインを示しており、このラインより上なら人気、下なら不人気とみます。

文系は、「文・人文」が前年比105%と志願者が増加、コロナ禍以降不人気が続いていた「地域・国際」「国際関係」分野も志願者が増加しました。理系では、「理」が前年比103%と増加しました。「農」は前年比98%と減少しましたが、分野別にみると「獣医」は4年連続で志願者が増加しました。

近年注目の情報系ですが、「総合・環境・情報・人間」の「情報」では志願者が前年比107%と増加しました。一方、「工」系統の「通信・情報」で同96%と減少、「理」系統の「数学・数理情報」で同100%と前年並みでした。同じ情報系でも志願者の増減に濃淡がでる結果となりました。

<図表5>国公立大入試 一般選抜の入試結果
<図表5>国公立大入試 一般選抜の入試結果

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今春入試では、大きな変化は見出せませんが、近年は女子の志望の変化が系統人気に影響を与えています。全統模試での女子占有率の変化を昨年と5年前で比較すると、「文・人文」「看護」「生活科学」など、従来女子の多い系統では、占有率が低下しています。一方で、文系では「法・政治」「経済・経営・商」、理系では「理」「工」「農」や難関資格系の「医」「薬」で占有率が上昇しています。実学として社会で幅広く求められる学問を学ぶ系統やキャリアに直結する資格系など、近年の女子のキャリア意識の変化を示しています。

強気に難関大を出願する姿勢続くも、合格率はアップ

<図表6>は国公立大を3つに分けたグループの志願状況をみたものです。難関10大学、準難関・地域拠点大の志願者はともに前年比101%と堅調に志願者を集めました。共通テストの平均点がアップしたため、強気に難関大に出願をした様子がうかがえます。<図表7>は難関10大学とそれ以外の国公立大前期日程の志願者数の推移です。この間、難関10大学の志願者は約2%しか減少していません。一方で、難関10以外の大学の志願者数は約13%も減少していることがわかります。環境は変われど、難関大を志望する志願者の数は大きく変わっていないことを示しています。

<図表6>国公立大入試 一般選抜の入試結果

グループ 志願者数 合格者数 倍率(志/合)
2024 前年比 2024 前年比 2023 2024
難関10 56,326 101% 20,139 100% 2.8 2.8
準難関・地域拠点 41,702 101% 15,816 101% 2.6 2.6
その他 134,313 100% 54,726 99% 2.4 2.5
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  • 難関10大:北海道大、東北大、東京大、東京工業大、一橋大、名古屋大、京都大、大阪大、神戸大、九州大
  • 準難関・地域拠点大学:筑波大、千葉大、東京都立大、横浜国立大、新潟大、金沢大、大阪公立大、岡山大、広島大、熊本大
<図表7>国公立大志願者数推移 難関大 VS その他大
<図表7>国公立大志願者数推移 難関大 VS その他大

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難関大では志願者数に大きな変化はみられませんが、合格率には変化がみられます。<図表8>は国公立大3グループの成績層別の合格率を今春と5年前の2019年度で比較したものです。各グループともすべての成績層で合格率がアップしています。難関10大学では、アップ幅は他グループと比べ控えめなものの、合格率は各成績層で上昇しています。注目したいのが、偏差値55~60の成績帯の合格率です。難関10大学の合格には少し厳しい成績帯ですが、5年前より5ポイントも合格率が上昇しています。模試時点の成績を用いていますので、本番入試までに力を伸ばしていったと考えられますが、この5年で難関大も合格しやすくなってきたといえるでしょう。

<図表8>国公立大 成績層別の合格率の推移
  受験者の成績層 合格率
2019 2024 24-19
難関10大 65以上 61% 64% +3%
60~65未満 44% 46% +2%
55~60未満 28% 33% +5%
50~55未満 13% 13% +0%
45~50未満 3% 4% +1%
45未満 2% 3% +1%
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  受験者の成績層 合格率
2019 2024 24-19
準難関・地域 65以上 66% 68% +2%
60~65未満 59% 64% +5%
55~60未満 49% 55% +6%
50~55未満 35% 42% +7%
45~50未満 19% 24% +5%
45未満 5% 10% +5%
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  受験者の成績層 合格率
2019 2024 24-19
その他大 65以上 65% 71% +6%
60~65未満 58% 64% +6%
55~60未満 56% 62% +6%
50~55未満 49% 58% +9%
45~50未満 38% 48% +10%
45未満 18% 32% +14%
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  • 河合塾入試結果調査データより
  • 前期日程で集計
  • 受験者の成績層は模試時の成績を利用
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