2024年度入試を振り返る私立大の入試結果分析
志願者数は前年並み、共通テスト方式でやや増加
私立大の志願者は前年比99%となりました<図表9>。新課程前年ではありましたが、受験生はそれほど手厚く出願校を増やさなかったようです。方式別にみると、一般方式は前年比98%、共通テスト方式は101%とこちらはやや増加しました。先ほどご紹介したように、今春の共通テスト本試験では3科目以下の受験者の減少が目立ちました。そんな中、共通テスト方式が増加した要因としては国公立大との併願者が私立大の出願校を増やしたことが挙げられます。河合塾の入試結果調査データでみると、国公立大併願者の私立大出願数は増加、とりわけ共通テスト方式で増加が目立っていました。
志願者数 | 合格者数 | 倍率(志/合) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
2024 | 前年比 | 2024 | 前年比 | 2023 | 2024 | |
全体 | 3,017,689 | 99% | 1,074,154 | 99% | 2.8 | 2.8 |
一般方式 | 1,977,839 | 98% | 626,171 | 96% | 3.1 | 3.2 |
共通テスト方式 | 1,039,850 | 101% | 447,983 | 104% | 2.4 | 2.3 |
一期 | 2,830,662 | 99% | 1,018,803 | 99% | 2.8 | 2.8 |
二期 | 187,027 | 95% | 55,351 | 100% | 3.5 | 3.4 |
- 河合塾調べ(5/24現在、523大学判明分)
合格者数も全体では前年比99%となり、志願者・合格者とも前年並みの数字でした。倍率をみても変動は小幅です。地区別の状況を倍率で確認すると、首都圏・近畿圏は3倍を保っていますが、そのほかの地区は倍率ダウンが続いています。なお、首都圏であっても個々の大学を見ると、多くの大学で倍率(志願者÷合格者)が2倍を切っている状態です。都市部の大学は倍率を維持しているというよりは、一部の大学のみが高い倍率をキープ、その地区の倍率を押し上げているという状態です。今春、入試結果が判明している大学の7割弱が倍率2倍を切っています。その中にはほぼ全員合格という大学もあります。
情報系学部の人気はやや低調
<図表10>は学部系統別の志願状況をみたものです。文系学部では、「社会・国際」が前年比103%と増加しました。なかでも「国際関係・他」は前年比105%と、近年不人気だった国際系で回復の兆しが見えました。理系学部をみると、「理」「工」「農」はいずれも前年並みとなっています。医療系は「医」が前年から1割増となっており、高い人気を示していますが、その他の分野の人気は低調です。「総合・環境・情報・人間」は前年並みとなっていますが、「情報」分野は志願者が減少しました。国公立大とは異なり、学際系の「情報」分野は志願者が集まっていない状況です。
私立大でも女子の志望の変化が系統人気に変化を与えています。全統模試での女子占有率の変化を昨年と5年前で比較すると、「経済・経営・商」や「工」などは女子の占有率が上がっている一方で、「文・人文」や「生活科学」などでは占有率がダウンしています。女子がさまざまな系統に志望を広げている様子がわかります。近年、首都圏の女子大などで志願者の減少が続いていますが、女子大が不人気なのではなく、女子大に多い学部系統で女子志望者が減っていることが要因です。
難関私立大でも合格率アップ
国公立大と同様、受験者の成績層別の合格率の変化をみてみましょう。<図表11>は私立大3グループの成績層別の合格率を今春と5年前の2019年度で比較したものです。どの大学グループ・どの成績層でも5年前と比べて合格率がアップしています。早慶上理では偏差値55以上の合格率がアップしています。MARCHでは偏差値55~60未満の成績層で14%合格率がアップしています。関関同立は早慶上理やMARCH以上に合格率のアップ幅が目立ちます。偏差値55~60未満の成績層の合格率が5年前は4割程度となっていましたが、2024年度の合格率は5割を超えており、半数以上が合格していることになります。難関私立大では国公立大以上に競争緩和の様子が見て取れます。
受験者の成績層 | 合格率 | ||||
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2019 | 2024 | 24-19 | |||
早慶上理 | 65以上 | 52% | 62% | +10% | |
60~65未満 | 21% | 31% | +10% | ||
55~60未満 | 10% | 15% | +5% | ||
50~55未満 | 5% | 6% | +1% | ||
45~50未満 | 3% | 3% | +0% | ||
45未満 | 3% | 4% | +1% |
受験者の成績層 | 合格率 | ||||
---|---|---|---|---|---|
2019 | 2024 | 24-19 | |||
MARCH | 65以上 | 72% | 77% | +5% | |
60~65未満 | 45% | 58% | +13% | ||
55~60未満 | 21% | 35% | +14% | ||
50~55未満 | 7% | 15% | +8% | ||
45~50未満 | 3% | 5% | +2% | ||
45未満 | 1% | 2% | +1% |
受験者の成績層 | 合格率 | ||||
---|---|---|---|---|---|
2019 | 2024 | 24-19 | |||
関関同立 | 65以上 | 80% | 87% | +7% | |
60~65未満 | 61% | 74% | +13% | ||
55~60未満 | 39% | 56% | +17% | ||
50~55未満 | 19% | 37% | +18% | ||
45~50未満 | 7% | 17% | +10% | ||
45未満 | 2% | 6% | +4% |
- 河合塾入試結果調査データより
- 早慶上理:早稲田大、慶應義塾大、上智大、東京理科大
- MARCH:明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大
- 関関同立:関西大、関西学院大、同志社大、立命館大
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